食べるはいつから 食べるはこれから 〜博物館から始まる食育〜

〜博物館から始まる食育〜 私たちにとって最も身近で重要な「食」。科学と歴史の知識を培いながら、何を、どれだけ、なぜ必要なのか、を深めていくと、生きるヒントがたくさん見つかります。日本国内のすぐれた博物館で、ぜひ触れてみましょう。

植物の細胞でも動物の細胞でも、生きるために必要な材料は似ている、と述べましたね。姿かたちも、生き方も全然違う生物なのに、本当にそんなことが言えるのでしょうか?実は、植物と動物に限らず、菌類など、およそ生物と呼ぶには微妙なエリアの生物においても、その形が細胞に由来するものであれば、かならず必要な物質があります。
それが、ATP、すなわち、「アデノシン三リン酸」という物質です。
ちょっと難しい物質名が出て来てしまいましたね。もし、とっつきにくいようでしたら、どの細胞でも必要とする共通の物質がある、ということだけ覚えておいて下さい。

細胞の活動にATPが必要なのは、すべての生物で共通しています。外から取り込む材料は違っても、最終的にそれらが細胞のなかで利用されるときには、ATPの形になって利用されています。これは、細胞の構造に由来しています。植物にしろ、動物にしろ、またいずれでもないにしろ、細胞という構造をつくるために必要な材料は基本的に共通していて、だからこそ、どの細胞でもATPが利用されているのです。どんなに遠縁の生物種でも、細胞という最小単位にまでクローズアップすると、その構造にも働きにも決まったルールや共通点がある。この事実は、一体、何をものがったっているのでしょうか?

実は、現在、多くの科学者は、地球上のすべての生物の祖先を辿っていくと、やがて一つの生物にたどり着く、と考えています。この全生物にとっての共通祖先を「Last Universal Common Ancestor」と言います。この子孫が様々に別れ、進化して、多くの生物を生み出していった、と考えられているのです。

ところで、「食べる」ことをするのは、全ての生物ではなく、動物に属する生物です。植物に属する生物は、行動として「食べる」ことはしません。では、植物はどのようにして体に必要な材料を調達しているのでしょう。

多くの植物は、根から吸い上げた土壌中の水分や養分をエネルギー源や体をつくる材料としています。さらに、植物の中でも緑色の色素をもち光合成を行うものは、太陽から受ける光を利用して、空気中の二酸化炭素から「糖(デンプン)」という大きなエネルギー物質を作り出す力も持っています。光合成をする植物は、この糖を体内に蓄えて、自分の成長や子孫のために使うので、とても大きく成長したり、たくさんの子孫を増やすものがあります。

これに対し、動物に属するものの多くは口という、食べたり飲んだりするために使う大きな器官を持ち、そこから入れるものを通して、体に必要な材料を補給します。実は、動物の細胞でも植物の細胞でも、生きるために必要な材料は基本的には似ていて、両者とも同じ様なものが必要なのですが、動物は動きますから、たくさんのエネルギーを必要とします。そこで動物は、自分でエネルギー源を作ったり蓄えたりせずに、植物など他の生物が作ったエネルギー源や体そのものを利用することにして、動くことを優先させたのです。その結果、動物はとても早く動けますし、とても大きくなる種類もいます。しかし、動物は植物なしには生きられません。とくに、緑色植物がつくる糖は、大きなエネルギーを必要とする動物にとって非常に重要なエネルギー源です。動物は、多くの植物が生きていてこそ、生きることができるのです。

私たちの体は多くの細胞からできています。細胞が集まり、組織を作り、さらに組織は器官をつくり、互いに接続したり、連携して、体を作り上げています。多くの細胞が集まり、高度に発達したことによって、私たちは、過酷な環境でも生き延び、子孫を残し、なおかつ長く生きることができるのです。

さて、細胞の活動には必要な材料があります。必要なものが得られなければ、細胞は活動できません。
つまり、生きることができないのです。さらに人間のように高度に発達した器官や組織をもっている生物では、その器官や組織ごとに細胞も特化されたものになっていて、必要なものも違っていたりします。もっている細胞の種類が多ければ、その分、さまざまな種類のものが必要になります。さらに体の大きな生物では、種類だけでなく量もたくさん必要になります。

しかし、多くの細胞や組織同士が連携する私たちの体内では、それらが互いに互いの必要な材料を補うような仕組み、つまり、必要な材料を、限られた材料から自分で合成し、活用するしくみも持っています。ですから、特別意識しなくとも、おおかたの材料は自分の体内で用意できるのですが、その大元になる材料や、進化の過程で手放してきた機能によって合成される材料については、高度な連携システムを持ってしても準備することはできません。このような、自分だけではどうしても賄えない材料については、外にあるもので調達しなければなりません。細胞活動に必要で、体の外部に存在するものを取り込む作業の一環が「食べる」ということなのです。
続きを読む

わたしは、健康に生活するためには、どんなものをどんなふうに食べればいいのかを、わかりやすくお話ししたりする仕事をしています。
でも、なぜ健康をこころがける必要があるのでしょう。
日頃から体調に気をつけて、健康でいられるように心がけておくと、免疫バランスが整って抵抗力がつき、万が一、病気や怪我をしても、早く回復することができます。 そして、快適に生活することができます。
食べる、ということは、体の健康を保つうえで、最もベースとなる要素のひとつです。ですから、私は、自信をもって、「健康な生活に繋がるように、バランスよく食べましょう」と言います。

それにしても、人間はとても多くの栄養素を外から取り込まなければなりません。健康な体を維持するためには、キライなものでも食べなければならないこともありますね。
そもそも、なぜ食べなければならないのでしょう。植物のように、自分で栄養を作ることができれば、こんなに楽なことはないのに。。

そこで、なぜ、私たちは食べるのか、を最初からきちんと見つめなおしてみることにしたのです。すると、思いがけず、随分と遠くのことまで、調べなければなりませんでした。

ちょっと食べ物とはほど遠いところまで遡ってきましたが、でも、戻ってみるとたくさんの答えを得ることができました。
そこで、簡単に私が辿ってきた「食べる」の歴史を、皆さんにご紹介しようと思います。

↑このページのトップヘ