前述のように、生物の誕生に関しては様々な仮説が立てられていますが、多くは、その場は海であった、と考えられています。
さらに、近年では、様々な調査結果から、科学者の多くが、生命のはじまりは深い海底にあった、と考えています。

深海には、地球の地殻活動によって高温となった熱水が吹き出すところ、これを熱水噴出孔といいますが、これが何カ所もあります。
近年の深海調査で、このような、生命が生息するには過酷すぎるような極限の領域にすむ生物群が確認されています。
実は、このような生物群のあり方が、生命の起源に最も近いのではないか、と考えられているのです。


前述したように、生命の起源に関しては様々な仮説があり、まだまだ決着はしないと思われますが、とりあえず、「複製し、増える」という条件をもった物質が深海で合成された、として想像してみましょう。その物質は深海に漂う成分や熱の作用をうけ、どんどんコピーを増やしていった、とします。
増えていったコピーの中には、ときどきすこし違うもの、つまりコピーミスのようなものも生成されたかもしれません。
「複製し、増える」物質は、それに似たものも含めて、海底を覆い尽くすほど増えたかもしれません。

こうして、海底は、いわゆる「生物の定義に近いが、生物ではないもの(1)」、つまり、細胞の構造に近いが細胞ではないものが、様々に存在するフロンティアとなったのかもしれません。
「細胞のようなもの」が新しく生まれたり、消えていったりしながら、その場の状況に叶うものが、どんどん増えていったのではないか、と考えることができます。この中から、やがて、細胞とよぶのに必要な条件をもった単純な構造の古細菌(アーキア)やバクテリアが誕生したのではないか、と考えられているのです。

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※(1)細胞の構造を持たないものでも、生物のようにふるまうものとして、「ウィルス」があります。
ウィルスは細胞を持ちませんが、特定の条件(核基質)をもつ細胞に寄生して増えます。ウィルスの誕生は細胞よりもさらに古いと考えられ、これを生命の起源と考える人もいます。

参考文献:童心社 遺伝子・DNAのすべて 夏緑 著 

※参考:「生物と無生物のあいだ」