太陽光に対抗できるようになった細胞の勢いは、いよいよ増して行きました。居場所となるエリアを拡大しながら、その環境下で存続できないものは消え、持続可能なものが残り、やがてその形質が引き継がれ、数を増やす、という試行錯誤を繰り返しながら拡大していった、と思われます。
やがて、この中から、太陽光の作用をうけても死なないどころか、これを利用できるものが出てきました。膜内の化学反応において、太陽の光による作用を利用できるようになったのです。

このような細胞の中に、後にシアノバクテリア(1)と呼ばれるものが含まれていました。シアノバクテリアも核を持たない、極めて原始的な細胞ですが、二酸化炭素と水を得ると、太陽光を光エネルギーとして、炭素化合物(有機物)を生成しました。二酸化炭素という単純な材料(無機物)から、自分で栄養源(有機物)を合成できましたから、シアノバクテリアは独立栄養生物です。光のエネルギーを利用することを付け加えれば、光合成独立栄養生物とも呼べます。
深海とは違う、新たなエネルギー・栄養の合成系が確立されたことになります。

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 シアノバクテリアが岩に付着している様子(ストロマトライト)
 
シアノバクテリアは、今から36億年ほど前に誕生したと考えられ、その後、爆発的に増えることになります。きっと、その時の地球環境は、シアノバクテリアが増える条件をたくさんそなえていたのでしょう。シアノバクテリアは光を利用しましたから、太陽光が差し込むところにいました。新しいシアノバクテリアを生み出しながら、古いシアノバクテリアはやがて機能しなくなくなって、海底に沈んでいきました。
沈んだものは、そのまま堆積して、層をなしていきました。
これが、石油のもとになりました。このころ、まだ酸素は地球上には少なかったので、海底につもったシアノバクテリアだったものは、酸化分解されなかったのです。つまり、腐敗せずにそのまま残ったのです。やがて地球の地殻変動にそのまま巻き込まれ、独特の化学構造をもつ物質(2)へと変化していった、と言われています。

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現代の生活に欠かせない石油は、太古の昔に棲息していたシアノバクテリアの屍骸が変化したもの

また、シアノバクテリアは光を利用した化学反応の結果、その過程で酸素を生成しました。爆発的なシアノバクテリアの増加で、放出される酸素も増えて来ました。酸素には、他のものに結びつき、物質を変性させる力(3)があります。ですから、酸素を必要としない細胞にとっては、毒性の高い物質なのです。酸素の増加は、それまでの細胞の分布に大きく影響したはずです。 シアノバクテリアによって吐き出された酸素がたくさん存在するようになっていった海では、それまで順調に発展していた細胞のうち、酸素の増加によって滅んでしまったものもあったかもしれません。また、海水中にとけていた鉄も酸素と結びつき、酸化鉄となって、海底に堆積する(4)ようになっていきました。

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海に溶けていた鉄に酸素が結びついて酸化鉄となり、堆積して縞状鉄鋼床を形成していきます
(Photo:Banded Iron Formation specimen from Upper Michigan.)


※(1)ラン藻類であるシアノバクテリアは、今から約36億年前に誕生した、と考えられています。
※(2)炭化水素という物質です。
※(3)酸化反応といいます。
※(4)鉄イオンが酸素に反応し、酸化鉄となり、これが堆積したものが地層や化石などになって今も残っています。これを「縞状鉄鋼」と呼びます。現在工業的に使われる鉄鉱石の大半がこの縞状鉄鉱床から採掘されています。


参考:さ・え・ら書房 目で見る進化 ダーウィンからDNAまで ロバート・ウィンストン著 相良倫子 訳 P.66,67
  :Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/wiki/縞状鉄鉱床) 
  :シアノバクテリアの窒素固定(http://www.brh.co.jp/seimeishi/journal/037/research_21b.html)