生物であることの根幹は体が細胞で出来ていることです。多種多様に見えるどの生物たちも、よくよく見れば、小さな細胞の集合体であることに他なりません。
そして、この細胞ひとつひとつの基本的な成分や働きにおいても、実はどの生物もほぼ同じであることがわかっています。
姿も生態もぜんぜん違うのに、こんなことがあるのでしょうか?

まず、成分について見てみましょう。
細胞の主成分は、おもにタンパク質です。
このうち、細胞という形を保持し、細胞構造を支える成分として働くタンパク質を、「構造タンパク」と呼んだりもします。
それとは別に、細胞内や小器官内では、細胞に取り込まれた水分や、酸素、さまざまな分子をつかって化学反応がおき、これらが連係して、細胞の活動となり、組織の働き、器官の働きとなって、体を維持するしくみを支えています。細胞内でおきている小さな化学反応も、タンパク質があることによっておきます。細胞内の化学反応をおこすタンパク質を「酵素タンパク」と呼びます。
細胞の形においても、働きにおいても、タンパク質の存在が主体となっているのがわかりますね。
実は、全ての細胞において主成分はかならず、タンパク質なのです。
さらに、細胞の情報を司る核や核様体には、DNAやRNAといった「核酸」という成分が使われています。これも、共通です。さらに、「脂質」、「多糖類」も必ず持っています。
すべての細胞は、これら4つの成分をかならず持っているのです。

さらに、こうした細胞を形作る成分のほかに、細胞が「生きる」という仕事をする、つまりそれは「代謝する」ということですが、これにはエネルギーが必要です。細胞内の代謝系を作動させるにはエネルギーが必要なのです。このエネルギーを込めて塊にしたもの、それがATP(アデノシン三リン酸)です。細菌から、高等動物にいたるまで、すべての生物は、このATPを合成したり、分解したりすることで、エネルギーを貯めたり、使ったりして、代謝を行っているのです。ですから、ATPは生命の「エネルギー担体」とも呼ばれます。

細胞の成分も、エネルギー担体となる物質も共通するのは、そもそも生命を作り上げるための設計情報に用いられる暗号が共通しているからです。この暗号のルールは、どの生物でも決まっています。おそらく、それを決めたのがLUCAなのです。


参考
新・細胞の起原と進化 中村運 P.1
「細胞を組み立てている物質、すなわち成分は生物の種類にかかわりなく共通しています。すなわち、(1)タンパク質、(2)核酸(DNA、RNA)、(3)脂質、(4)多糖といった大きな分子量をもった物質(高分子という)です。」

食べて、食べられて、まわる 高橋英一 P.18
「さらに20世紀になると、分子遺伝学や生化学の進歩により、地球上のすべての生物は基本的に同じ遺伝暗号(DNAの4種類の塩基の組み合わせ)を用いて同じ20種類のアミノ酸からタンパク質をつくること、そしてタンパク質の触媒作用のもとにATPという共通のエネルギー通貨(図2−1)を使って、生長と増殖を行っていることが明らかになりました。これらの発見は多様性のなかに共通性があること、生物界は共通の祖先から進化し枝分かれして、多様化していったことを示しています。」

動的平衡2 福岡伸一 P.191
なぜ、生命の起源は単一だと言えるか


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