食べるはいつから 食べるはこれから 〜博物館から始まる食育〜

〜博物館から始まる食育〜 私たちにとって最も身近で重要な「食」。科学と歴史の知識を培いながら、何を、どれだけ、なぜ必要なのか、を深めていくと、生きるヒントがたくさん見つかります。日本国内のすぐれた博物館で、ぜひ触れてみましょう。

「食べる」の進化

大きな脳を持ち、それによって知恵や言語を獲得・共有し、社会や文明を構築した人類は、ぐんぐん数を増やし、繁栄していきました。
国連の2011年版「世界人口白書」によると、地球上に生息する人類の数、すなわち世界人口は、2011年に70億人に到達したと推計されています。
その数は、今や陸上に生息するどの哺乳動物よりも多く、この地球世界を制覇し、支配しているかのように見えます。

しかし、そんな王者のような顔をしたわれわれ人類も、生物の一種であることに変わりはありません。生物であるということは、けして、他の生物から隔絶した位置にいるのではなく、おなじグループに属する存在のひとつにすぎない、ということです。

前述した「生物の定義」を思い出してみましょう。
材料とエネルギーを得て、命のかぎり活動し、機会があれば子孫を残し、増えること。
この条件を叶える構造こそが、「細胞」であり、細胞こそが生命である大前提でした。

私たち人間の構造や生態を観察すると、つまりは、この生物の定義にあてはまる存在であることがわかりますね。
さらに研究が進むに従い、定義上、あてはまるだけでなく、他の生物と何ら変わらない多くの共通点があることがわかってきました。

つまり、どんなに数を増やし、地上を支配しようとも、結局は人間も、他の生物と本質的には、何ら変わりはないのです。
人間である以上、生物というこの範疇から、けして逸脱することはないのです。


参考:wikipedia「世界人口」

生物であることの根幹は体が細胞で出来ていることです。多種多様に見えるどの生物たちも、よくよく見れば、小さな細胞の集合体であることに他なりません。
そして、この細胞ひとつひとつの基本的な成分や働きにおいても、実はどの生物もほぼ同じであることがわかっています。
姿も生態もぜんぜん違うのに、こんなことがあるのでしょうか?

まず、成分について見てみましょう。
細胞の主成分は、おもにタンパク質です。
このうち、細胞という形を保持し、細胞構造を支える成分として働くタンパク質を、「構造タンパク」と呼んだりもします。
それとは別に、細胞内や小器官内では、細胞に取り込まれた水分や、酸素、さまざまな分子をつかって化学反応がおき、これらが連係して、細胞の活動となり、組織の働き、器官の働きとなって、体を維持するしくみを支えています。細胞内でおきている小さな化学反応も、タンパク質があることによっておきます。細胞内の化学反応をおこすタンパク質を「酵素タンパク」と呼びます。
細胞の形においても、働きにおいても、タンパク質の存在が主体となっているのがわかりますね。
実は、全ての細胞において主成分はかならず、タンパク質なのです。
さらに、細胞の情報を司る核や核様体には、DNAやRNAといった「核酸」という成分が使われています。これも、共通です。さらに、「脂質」、「多糖類」も必ず持っています。
すべての細胞は、これら4つの成分をかならず持っているのです。

さらに、こうした細胞を形作る成分のほかに、細胞が「生きる」という仕事をする、つまりそれは「代謝する」ということですが、これにはエネルギーが必要です。細胞内の代謝系を作動させるにはエネルギーが必要なのです。このエネルギーを込めて塊にしたもの、それがATP(アデノシン三リン酸)です。細菌から、高等動物にいたるまで、すべての生物は、このATPを合成したり、分解したりすることで、エネルギーを貯めたり、使ったりして、代謝を行っているのです。ですから、ATPは生命の「エネルギー担体」とも呼ばれます。

細胞の成分も、エネルギー担体となる物質も共通するのは、そもそも生命を作り上げるための設計情報に用いられる暗号が共通しているからです。この暗号のルールは、どの生物でも決まっています。おそらく、それを決めたのがLUCAなのです。


参考
新・細胞の起原と進化 中村運 P.1
「細胞を組み立てている物質、すなわち成分は生物の種類にかかわりなく共通しています。すなわち、(1)タンパク質、(2)核酸(DNA、RNA)、(3)脂質、(4)多糖といった大きな分子量をもった物質(高分子という)です。」

食べて、食べられて、まわる 高橋英一 P.18
「さらに20世紀になると、分子遺伝学や生化学の進歩により、地球上のすべての生物は基本的に同じ遺伝暗号(DNAの4種類の塩基の組み合わせ)を用いて同じ20種類のアミノ酸からタンパク質をつくること、そしてタンパク質の触媒作用のもとにATPという共通のエネルギー通貨(図2−1)を使って、生長と増殖を行っていることが明らかになりました。これらの発見は多様性のなかに共通性があること、生物界は共通の祖先から進化し枝分かれして、多様化していったことを示しています。」

動的平衡2 福岡伸一 P.191
なぜ、生命の起源は単一だと言えるか


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前述したように、LUCAから分岐してきたすべての生命は、様々に多様化しながらも、今も多くの共通物質をつかって生命現象を営んでいます。

これらの共通物質をさらに元素レベルにまで分解してみると、さらに地球と生命の深い関わりを伺い知ることができます。
生物の体の成分のほとんどは実は水分です。水分が70%ほど占めています。ですから、元素で言えば、水を構成する「水素」と「酸素」が、これにあたります。
次に水を抜いた成分を見てみると、「炭素」が最も多く含まれています。

実際、細胞の成分である「タンパク質」「核酸」「脂質」「多糖類」はいずれもその分子構造に炭素鎖が含まれます。
つまり、炭素なくしては、地球上の生物はなりたたないのです。

この「炭素」を使うところに、生命が地球上に繁栄できた最大の理由があります。
地球には炭素が豊富にあります。それは、地球の太陽系における位置にも由来します。
さらに、炭素原子をみると価電子数4、つまり、4つの手をもっていて、これが他の原子とくっついて様々な化合物を作りやすい、という特徴があります。
実際、私たちのまわりにも炭素は様々なかたちで存在していますね。二酸化炭素は気体、ダイヤモンドや炭も個体の炭素化合物です。さらに、炭酸水は液体ですね。
この炭素の変幻自在さが、生命を息づかせ、さらにさまざまに生き抜く多様性をももたらしたのです。

参考

えれきてる
特集1化学進化から全生物の祖先へ〜好熱菌誕生への道のり
(3)どこにでも豊富にある炭素を使う
(http://www.toshiba.co.jp/elekitel/special/2010/19/sp_01_c.htm)
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多くの生物が共通してもつ成分、さらにその元素が「炭素」である、ということをお話しました。
生命である細胞を構築している成分も、エネルギーを産生させるためにつかっている物質も、どれも炭素化合物です。ですから、すべての生命は、炭素を必要としています。

生物の水分以外の栄養摂取の目的は、言ってみれば「炭素」の獲得である、としても過言ではないのです。
生物は、生命代謝に必要な炭素を、自らが置かれたその環境でいかにして得るか、様々に試行錯誤して生き抜いてきました。
その結果、炭素の獲得の仕方は、生物によって実に様々です。

炭素を無機物の状態で獲得し、有機物に変換して、生物が使える炭素化合物に替えることができる生物を独立栄養生物といいます。
これとは別に、他者が生成した有機物を利用する生物を、従属栄養生物といいます。

この関係が、生物同士の栄養をめぐる相関関係、つまり、食べたり、食べられたりする関係を作るベースになっているのです。


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さて、生命が発生した当初、つまり、単なる物質から生命と呼べる存在になったころ、たとえば、その生命体は深海の生命フロンティアで合成された高分子の有機化合物だった、とします。
その存在は、独立栄養生物であったか、従属栄養生物であったか、というと、従属栄養生物であったであろう、と考えられています。

最古の生命体に最も近いと考えられているのが深海の生命体だと前述しました。

生まれたばかりの生命は、それが果たしてLUCAだったかは解りませんが、ある条件が揃うと分裂する、という特性を持ちました。そのきっかけが熱によるものなのか、あるいは、化学反応なのかはわかりませんが、「代謝」の起源となるような現象が起きたのでしょう。こうして生命体は生まれました。
この生命体がもつ代謝系に合致する成分が偶然キャッチされると、それによって化学変化が起き、自己複製が出来たのでしょう。有機化合物のスープであった、と例えられるほど、太古の海は様々な有機化合物が溶け込んでいた、と考えられています。あるいは、熱水に含まれる硫化水素やメタンを使ったかもしれません。
しかし、その反応も、今の生命体に見られるような迅速なものではなく、随分とのんびりしたものだったと考えられています。推定では、誕生したばかりの生命体が、細胞分裂するには数万年を要していた、と考えられています。

「生きる」は、当初、それほどまでに、実に気長で偶発的な現象だったのかもしれません。
その後、さらに何万年も何億年もかけて、すこしずつ変化しながら、また別の種類の細胞も生まれたことでしょう。
そのなかに、深海の熱水にふくまれる硫化水素やメタンを取り込んで、それを自分のもつ代謝系に利用し、二酸化炭素から有機物を合成するものが生まれました。このような生物は、自分で炭素を獲得できますから、出来上がった有機物を待つよりはずっと生きるのに有利だと言えます。しかし、従来どおりの従属栄養生物も、この独立栄養生物によって生成された有機物を利用できますから、この生物の側にいればぐっと生きるのに便利になります。
最古の生命体に近いと考えられる深海の古細菌も、硫化水素を利用するしくみをもっているものがいます。この古細菌は無機物の炭素を有機物に変えますから、独立栄養生物です。また、硫化水素やメタンによる化学反応ででたエネルギーを使っていますから、化学合成独立栄養生物である、と言えます。
この有機物を作れる生物を起点として、その有機物を食べたり、あるいは共生させていきる生物の世界が構築されています。太古の海でも、このような関係が構築されていたと考えられています。

やがて、深海を脱し、太陽光を利用して二酸化炭素から有機物を合成できる光合成能を獲得した生物が表れます。これによって、大量に放出された酸素分子は地球環境をかえていきます。しかし、酸素を利用できる生物の登場で、いよいよ生物は生存エリアを拡大させ、食べたり食べられたりの関係もより複雑化していったことでしょう。
実は、原核細胞が真核化したのも、この食べたり、食べられたりしあったことによって起きた、とする説もあります。

細胞たちは、生きるための炭素獲得のため、あるいは勢力拡大のため、相手を取り込んでいきました。取り込まれて、その細胞の栄養となっていく一方で、取り込まれても、その細胞のなかに生きづくものもいました。これを「食作用」といいます、食べたつもりが、食べられたものに乗っ取られたものもあったかもしれません。あるいは、食べられたものが、機能を分担して、いすわったものもあるかもしれません。こうして「食べる」ことが細胞の進化に繋がった、と考えられているのです。

さらに時が進んで、多細胞生物になると、いよいよ生物はエネルギーが必要になり、「食べる」もダイナミックになっていきます。しかし、すでに光合成を獲得していた生物界は、豊富に有機物を合成してくれる光合成植物の有機物を栄養として、動くことにより多くのエネルギーを必要とする動物が追随するという、植物と動物の関係が出来ていました。
エディアカラに見られるように、約5億年前になると、実に多様な生物群が見受けられます。それは動物どうしでも熾烈な食べると食べられるが行われていたことが解ります。

こうした海から陸へと脱出する動物もすこしずつ表れます。陸上にはすでに植物と菌類の合体した地位類が約7億年前に生きていました。それを追うように動物も陸上生活できるように進化していきます。


地球のほぼ全土に生物が行き渡ったのは、「食べる」という関係があったからに他成りません。

参考

新・細胞の起原と進化 中村運 P.16、17
「始原細胞は生命としての“ごく基本的なしくみ”は含まれていたのですが、それはまだ原始的で代謝能率の低いものでした。たとえば、現生で最下等といわれている細菌細胞は、十分な栄養の下で二分列するのに20〜30分を要します。これに対し、推定されている始原細胞はその細胞分裂に数万年を要していたでしょう。それほどに始原細胞は代謝能率が悪く、その分裂は遅々としたものだった、と考えられています。」

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では、私たちのような大きな体をもつ動物は、どうやって生まれたのでしょう。

現在、最も古い動物細胞として考えられているのが、襟鞭毛虫とよばれる単細胞生物です。
光合成能はありませんが、長い鞭毛をもち、これを運動させ、泳ぐように移動します。そして、襟を立てたような構造をもち、ここに入った栄養分を糧としています。

さらに、鞭毛の獲得だけではなく、光合成によって作られる糖と酸素を使った代謝は大きなエネルギー量を得ることができた、ということも動物細胞が発展する要因となりました。

発生後、動物細胞も、植物細胞の発展に追随して、発展していきます。

これとよく似た細胞が集まった構造をしているのが、カイメンです。
カイメンは、単細胞生物の集まったものですが、多細胞生物への進化の過程を考える上で、注目される生物です。カイメンは壷のような形をしていますが、その構造体をなす一つ一つの細胞は襟鞭毛虫のような形をしています。壷のような形の構造体の中に引き込まれた海水中の栄養分をこの細胞たちが得て利用しているのです。

やがて、動物細胞で構成される多細胞生物が成立すると、腔腸生物が発生し、より多くの栄養を獲得することが可能になりました。
こうして各種の動物へと進化していきます。

やがて、この中から、背骨や神経の原形となるものをもつ脊索動物が生まれ、さらに脊頭生物と呼ばれるナメクジウオのような生物も表れます。
ナメクジウオは、栄養を取り込む口のような器官がありますが、これにはまだ顎がなく、無顎生物とも呼ばれますが、これがやがて口へと変わっていった、と推測されています。
しかし、ナメクジウオのような形の化石は、古生代とされる中国の化石群に見られ、このころすでに、現在の魚に繋がる生物が生まれていた、とすれば、古生代のうちにすべての生物の門が揃っていたことになります。

進化にともない、魚は、海の中で最も大型で強力な生物へと変わって行きます。
その過程で、背骨や神経、筋肉、脳だけでなく、顎や歯、腸などの進化させていきます。

魚類の体内構造を見ると、原始的ではありますが、私たち人間にも見られる多くの臓器がすでに存在しています。

やがて、海を出て、陸上へと進出していくに従い、肺を獲得し、爬虫類になると、エラは退化させてしまいます。陸上に棲むようになって食べ物が硬くなると、歯の発達は目覚ましいものになります。
獲物を掴んでおくだけのものではなく、噛みちぎる、引き裂くことが出来るようになり、鋭い歯を持つようになります。

ほ乳類に発展しても、基本的には肉食で、鋭い歯を使った食性でした。さらにほ乳類は、丸呑みではなく、咀嚼もするようになりました。

陸上にあがったほ乳類は、基本的に肉食でしたが、やがて、獲物を獲得するより、側にある植物で栄養を賄うものが表れます。草食動物です。かれらは、消化が難しい植物から効率よく栄養素を取り出すために、歯と腸を独特なものに変え、生きる道を模索しました。




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大型の爬虫類が繁栄した時代に、細々と存続していたほ乳類でしたが、それなりに進化もしていました。
乾燥した環境でも子を生み、育てるしくみを発展させ、また、恐竜ほど極端な巨大化はしなかったものの、大型化するものも現れ、恐竜の子供なら捕獲して食べていたであろうと考えられています。

やがて、巨大隕石の衝突によっておきた急激な寒冷化によって、恐竜が衰退すると、ほ乳類は一気に数を増していきます。
恐竜の勢力が弱まった地上で、その場に入れ替わったのは、体温を保持する体内機構をもち、寒冷期でも活動を続けられたほ乳類でした。
ほ乳類の繁栄は、白亜紀後期ころから始まり、それぞれに生息する場や環境に応じて、多くの種に分化していきました。現在生息する多くのほ乳類は、このころ出現したほ乳類のグループ「有胎盤下綱」に属します。
我々人類が属する霊長類もこの有胎盤下綱に属し、6500万年ほど前に出現した、と考えられています。(詳しくは1402を参照)
霊長類は、その生活の場を樹上とし、その場に合った体や食性へと変化していきます。
そして、霊長類の中から、多くのサルが分化していきました。


天敵のいない森の樹上で、サルは繁栄していきました。
腰掛ける姿勢が多かったサル類は、脳を大きくしていきます。その過程では、器用に使える手指を発達させ、枝や石などを道具として使う知恵も持つようになりました。さらに、仲間や家族を大切にする情動行動も持つようになっていきます。

サルの楽園となった森は、多くのサルが生息することになり、また中には体の大きなものも現れるようになってきました。すると、数が増えたことによって、エサの取り合いも増えはじめていた樹上の生活から、ときどき地上におりる者もあらわれるようになりました。
そのころ、気候変動から、乾燥地帯が増え、地上には草原が増えていきました。
地上での適応力をすこしずつ持ち始めていたものは、やがて窮屈になった森を出て、やがては、樹上から完全に地上へと生活の場を変えるものが出てきました。
そのなかから、人類は誕生しました。
地上の生活は、二足歩行の生活へと体を進化させました。平原におりた人間は、狩りや採集をしながら、食糧や気候の変動にともなって移動を繰り返し、地球全土に広がって行きました。

人類が、地球の各地に渡ったころから、地球は氷河期だったのが温暖化しはじめ、海面は上昇し、陸続きだったところで低いところは海に沈み、人の往来がすこし狭められました。
そのころ、狩猟採集の生活から、すこしずつ農耕、畜産の知恵や技術を獲得しはじめ、岩穴などに定住するものがあらわれていた人類は、安定した食糧を獲得したコロニーほど拡大していくようになります。

やがて穀類や芋類など、その土地で確保しやすい食物を主食とするようになっていきます。
脳が大きくなった人類にとって糖類は重要だったのです。
こうして各地に定住するようになった人類はその土地に特化した種族や民族となって、その土地の食文化を作り上げていくことになります。

↓(2007)
生物誕生から、人類誕生までの道筋をたどると、およそ、人間という動物になるまで、どんなものを食べて来たかがわかりますね。

猿人、原人、新人と進化してきた人類ですが、基本的には他の霊長類の動物(サル類)と、かわらない部分を持っています。
そもそも肉食であるほ乳類のうち、樹上を住処と決めた霊長類は、昆虫などの小さな動物を食べていた、と考えられています。
今でも、原猿類という古い猿のグループには昆虫を食べるものが多くいます。
また、このころには植物界にも被子植物への進化も進んでいた、と考えられ、木になる実や種子も食べていた、と考えられています。
動物のなかで、ビタミンCを体内で合成できないのは、数種の動物以外はすべて霊長類で、もちろん人間も含まれます。
樹上での植物摂取ではビタミンCが豊富で、体内で合成しなくても不足はおきなかったため、しだいにビタミンCの合成能力が退化していったのではないか、と考えられています。

こうして、肉食と、植物食のいずれも食性として獲得していきながら、また不要なものは退化させるなどして、自分の棲む場所に適合した食性へと進化と分化をすすめていった、と考えられています。

やがて森を抜け、地上で二足歩行をする生物として進化していき、現在の私たち、ホモ・サピエンスおなるわけですが、現在の人類(ホモ・サピエンス・サピエンス)登場以降、人類の進化は止まっています。
これは、脳が大きくなり、環境適応力が知恵によって補われるため、姿形を変えなくて済んだから、という説もあります。

脳が大きくなった人類は、他のサルに比べて、格段に糖類を多く摂取する必要がありました。
同じ部分がある一方、人類が独自のもっている食性もあるのです。

さらに、他のサル類よりも体が大きくなった分、タンパク質、脂質も、多く必要です。
このため、ヒトにとって動物性の蛋白質、脂質も貴重であり、狩猟をして、これらの栄養素を賄っていました。

こうして多くの生物が「食べる」を通して進化や分化をはたし、多くの生命体がこの地球上に存在できることになりました。

この多くの生物のありようを俯瞰で見てみると、その環境ごとに生物は社会を築いている事がわかります。
それが生態系です。

生態系は、自分で無機物から有機物を合成できる独立栄養生物を起点に、それに依存する生物が追随する形で構築されます。生物の発生当初は、嫌気性の化学合成独立栄養生物が生態系の基盤となっていました。酸素が増えてしまってからは、その生活の場は深海に限られてしまいましたが、酸素を取り込み、また光合成能を獲得した生物が登場してからは、海でも、陸上でも、この生物が生態系の基盤を構築する生物へと成り代わりました。

植物は実にさまざまに進化し、多くの場所に生存できるよう進化しました。そのおかげで、自分では無機物から有機物をつくれない動物も発展できたのです。

最初に二酸化炭素だった炭素は、独立栄養生物によって有機物にされると、その生物の生長に使われます。一方、これに依存する動物は、その有機物を奪って、利用しています。この動物が他の動物に食べられれば、さらにその動物が、その有機物を奪って利用することになります。
最初に植物で合成された有機物は、食べた生物の体内でその都度、別の分子に合成されますが、食べた生物の体を順繰りに巡りながら利用されているのです。
このようすを「食べ回し」と呼びます。

二酸化炭素に限らず、生物に必要な栄養は、栄養を作り出せる生物を起点に、食べ回すことで、様々な生物たちの体を巡って行きます。種も姿も違う生物でも、同じエリアに棲むものは、この食べ回しのどこかに必ず参加しています。

しかし、この食べ回しには、順序があります。植物を食べる動物、その動物を食べる肉食動物、あるいは、植物も動物も食べる雑食動物の順です。
動物がもつ食性によって、食べて食べられることで、数珠つなぎに繋がっている生物と生物の関係を、「食物連鎖」といいます。
生物ごとに食べ方、食べ物の違いがあることが、食物連鎖をうみ、食物連鎖が、同じエリアに複数の様々な生物が存在することを可能にしているのです。

生態系は、とかく「食べる」「食べられる」という食物連鎖の構図が中心になりがちですが、実は非常に重要な役割をもっている、もう一つの立場があります。
食物連鎖は、有機物を合成できる生物、たとえば陸上の生態系で言えば、植物がありますが、これを「生産者」と呼びます。
さらにこれを食べて生きる生物を「消費者」といいます。場合によっては、もっぱら植物ばかりを食べる生物を一次消費者、さらにその生物を捕食する生物を二次消費者、などと呼ぶこともあります。
これらの消費者は、生産者を食べるだけ食べておしまいのように思いますが、実は、その死後、その体をエサとする生物もいるのです。また、消費者の残すフンもそうです。消費者の体や、そのフンはその名のとおり多くの栄養を消費した結果できあがっていますから、高い栄養価があります。これを栄養とする生物を「分解者」といいます。
分解者には、ミミズなどのような物理的分解者と、腐敗菌や土壌菌などの化学的分解者があり、最終的には、無機質になります。こうして、地球の成分へと帰るわけです。

こうして、生命は最終的に地球の物質循環に合流しているのです。
地球レベルの巨大な物質循環サイクルのなかで、生きるのに必要な炭素、窒素、リン、水素、酸素やその他のミネラルをちょっと拝借し、「食物連鎖」という小さなサイクルでやりとりしているのが、生物なのです。
細胞に必要な物質が共通しているからこそ、できるサイクルです。

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地球のもつ様々な条件下でおきている壮大な物質循環に、便乗して存在しているのが生物であり、生物どうしの間でもこの元素のやりとりをする「生態系」という関係が築かれている、と前述しました。

この生態系という生物界の社会は、そのエリアでどういった独立栄養生物、すなわち生産者が住み、それに追随する消費者をどれだけ支えられるか、によって、そもそも数や規模が決まって来ます。
つまり、複数の生物が棲めるといっても、数はある程度限られていて、さらに生態系における順位や地位別に区切れば、その数はさらに絞られてきます。
しかし、ここに組み込まれない限り、継続的にその種の生物がそこに居続けることはできません。
生態系における居場所の確保こそが、生物種の存続に関わってくるのです。

生態系内の居場所を「ニッチ」とよび、同じ様な食性をもつ動物がエリアに入ってきた場合、在来の生物とニッチを奪い合うことになります。そして、この勝負に勝ったものが、残り、負けたものは移動するか、あるいはそのエリアにける絶滅への道を辿ることになります。
生物は、変動する環境に応じて移動し、ニッチを奪い合い、より有利なものが残る、ということを繰り返してきました。このことが、生物の熾烈な競争を生み、またそれこそが進化を促した、とも言えます。

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