食べるはいつから 食べるはこれから 〜博物館から始まる食育〜

〜博物館から始まる食育〜 私たちにとって最も身近で重要な「食」。科学と歴史の知識を培いながら、何を、どれだけ、なぜ必要なのか、を深めていくと、生きるヒントがたくさん見つかります。日本国内のすぐれた博物館で、ぜひ触れてみましょう。

「食べる」の今、そして未来

巨大化する農業経営により、安定した収穫が期待できるようになった一方で、その収穫を確保するには農薬の撒布が必須となってきました。すると、農薬による環境汚染の問題が大きくなってきたのです。
1962年、アメリカの生物学者レイチェル・カーソンによって発表された「沈黙の春」は、農薬で利用されているDDTなどの化学物質の危険性を取り上げ、注目されました。

その中で、次に期待されたのは、バイオテクノロジーでした。
目覚ましい化学分野の発展とともに、生物のしくみに関する探求もすすみ、1953年にはワトソンとクリックによってDNAの二重螺旋構造が発表されます。遺伝子の存在としくみが解明され、以降、20世紀はまさにバイオテクノロジーの時代となります。
その後、さらに遺伝子研究も進み、よりよい品種を生み出す研究も盛んになりました。
遺伝子操作においては、倫理的問題をはじめ、さまざまな問題が現在も提起されていますが、これにより病害虫に強い品種の開発により、農薬散布の手間と、それによる環境汚染を減らすこともできるようにもなりました。


参考
北海道環境財団「はじめよう!環境学習」
(http://www.heco-spc.or.jp/ecokids2/03_02.html)

http://ja.wikipedia.org/wiki/レイチェル・カーソン

こうして、天候に左右されず、常に多くの食物を手にしたはずの現代で、しかし、飢えに苦しむ国はいまも現実に存在します。

FAO(国際連合食糧農業機関)による世界栄養不足人口、すなわちハンガーマップを見ると、栄養不足に陥っている国民の割合が35%にもわたる国があります。その国のほとんどがアフリカに集中しています。
飢餓に苦しむアフリカの国のすべての事情が同じではありませんが、多くが安定しない政治情勢によって繰り返される内戦によって生活の場を奪われていることや、干ばつによる降水量の不足によって農作物の収穫ができないことによるものが主な要因となっています。

このような国では、生活全体の質が低下し、医療が行き渡らず、伝染病なども蔓延し易くなります。
アフリカの乳幼児死亡率は非常に高く、5歳の誕生日を迎えるまでに亡くなる子供が1000人のうち100人以上にものぼる国もあります。

このような事態を改善すべく、多くの国が医療や食糧を支援をしますが、根本的な解決には結びついていません。


参考資料

FAO MAP 世界栄養不足人口 ハンガーマップ 2013
(http://www.jaicaf.or.jp/fileadmin/user_upload/publications/FY2013/FAO_13Wn_Map.pdf)

新生児・乳児死亡率、国別順位 - WHO世界保健統計2013年版
World Health Statistics 2013, WHO
(http://memorva.jp/ranking/unfpa/who_2013_neonatal_infant_mortality_rate.php)

飢餓だけでなく、増えすぎる人口も問題になっています。
爆発的に人口が増えるとその国では、食糧だけでなく、電気や水など、生活インフラのすべてが不足します。これに伴い、それを補うための新しい施設や住まいや農園が、手つかずだった森林や山を切り崩し、作られました。
人口増加が著しいブラジルでは、アマゾン川流域に広がるジャングルが開拓され、発電施設などに作り替えられました。
同じ様に、人口が増えた中国でも、森林開発や渓谷のダム化が進められました。
人間の増加によって、人間の手が加わる場所が多くなり、それと反比例するように、もともとあったジャングルや森林、渓谷や、川が姿を消しているのです。
開発された土地は、従来もっていた保水量を保てず、降った雨水が洪水となって下流の町を襲う災害が多発するようになりました。

(↓wikipediaより抜粋)
国連食糧農業機関 (FAO) の統計によれば、全世界の森林面積は1990年には4,077,291千haであったが、2005年には3,952,025千haとなった。すなわち、この間に125,266千haの森林が消滅した(全世界の3.1%にあたる)。 

参考
http://ja.wikipedia.org/wiki/森林破壊

JAICA 世界の農林水産summer2011
(http://www.jaicaf.or.jp/fao/publication/QM11-summer.pdf)

FAO
(http://www.fao.or.jp/detail/article/1221.html)

State of the World's Forests 2014:FAO世界森林白書
(http://www.fao.org/forestry/sofo/en/)

人口増加や土地の開発だけでなく、人間の生活の質の変化自体も自然に影響をもたらすようになりました。特に大きいとされるのは、人間の生活で排出される大量の二酸化炭素です。

生物の多くは生きている間、酸素呼吸の過程で二酸化炭素を吐き出します。
産業革命によって、化石燃料が登場するまでは、生物による二酸化炭素の排出は、森林の光合成能力を超えることはありませんでした。むしろ、火山活動による二酸化炭素の排出のほうがはるかに大量の排出でした。

しかし、化石燃料の登場で交通や物流は格段に発達し、また石油を原料にした化学物質開発は生活を便利にしていきました。その過程で、人間の活動は呼吸以外の多くの二酸化炭素を排出するようになったのです。

二酸化炭素は、大気中に入ると、温室効果をもち、中の温度を保持してしまう性質をもちます。

これにより、二酸化炭素を多く含有した大気で地球全体がラップされた格好になり、こもった熱は、海水温は上昇させ、南極や北極の氷を溶かし、上昇した海面は、海抜の低い土地を沈め始めています。
海面上昇によって、陸地が減ると、大気中の二酸化炭素はミネラルと出遭う場が減り、いよいよ増加は加速していくと予測されています。


資料
気象庁 2.1.2 世界の二酸化炭素濃度
(http://www.data.kishou.go.jp/obs-env/cdrom/report/html/2_1_2.html)

参考資料

放送大学 
<img border="0" alt="6-01.jpg" src="http://pyx.up.seesaa.net/image/6-01.jpg" width="500">
地球規模の炭素循環


<img border="0" alt="6-02.jpg" src="http://pyx.up.seesaa.net/image/6-02.jpg" width="500">
世界における化石燃料からの二酸化炭素排出

急激な気温変化は、気候も変化させ、これまでには考えられなかった規模の災害や、酸性雨、大気汚染ももたらすようになりました。
気候の変化は、各地の生態系をも狂わせ、絶滅を余儀なくされる生物が、次々に姿を消しています。
多くの生物が姿を消しているこの事態は、その生物が独自にもつ「生き方」が、少しずつ消し去られていることに他なりません。

生物の生き方は、それぞれの生物が独自に開発してきたもので、そこには多くの化学反応が隠されています。その多彩な化学反応のやり方は、生物それぞれがもつ遺伝子に記述されています。
多くの生物がいる、ということは、そのやり方、すなわち生物が開発した様々な生き抜き方が記述された遺伝子が豊富に存在する、ということです。
生物種の豊かさを示すとき、生物の集団がもつ遺伝子の規模やあり様を指して、遺伝子プールという言葉が使われます。
生物種が豊富であればあるほど、地球で開発された「生き方」は豊富であることを意味し、それはすなわち地球上の遺伝子プールが大きい、と言い換えられます。

遺伝子プールが大きければ大きいほど、生命誕生以降、さまざまに枝分かれし、それぞれに開発してきた道の正しさが多いことを指しています。また、それほどに、地球が生物のゆりかごとして多くの可能性を持っているということにもなります。

しかし、生物種が減少して、遺伝子プールが小さくなると、その分、生物がこれまで編み出し、積み重ね来た記録が消滅し、そこからのびる可能性も途絶えたことになります。

生物がもつそれぞれのオリジナリティの多様さを示す遺伝子プールは、急激な環境変化による生物の絶滅によって、縮小の一途を辿っています。

参考
http://ja.wikipedia.org/wiki/遺伝子プール

人間の活動が地球環境に大きな影響を与えるようになり、科学者や研究者の中には、警鐘をならす人たちも多くなりました。1970年代に国連人間環境会議のアドバイザーを務めたルネ・デュボス氏が呼びかけた、という「Think Globally, Act Locally.」というスローガンは、今、まさに地球上にいる私たちひとりひとりが心にとめておくべきものとなりました。

地球をひとつの環境として、国を越えての取り組みは、当初、足並みが揃いませんでしたが、絶滅してゆく多くの生物、そして、格段に増え、巨大化する災害によって失って来た多くの人命によって、今、私たちは、進む地球環境の変動を、我が事として捕らえなければならなくなりました。
多くの国で、いかに化石燃料に頼らず、かつ未来もずっと人類がこの地球で生きて行けるようにするにはどうすればいいのか、それぞれの国ができることから始めようとしています。

中国では、森林を失った山に植林をする取り組みがなされ、山のもつ保水能力がすこし改善されて、洪水が緩和されはじめた地域があります。
また、熱帯雨林の減少が問題になっていたブラジルでは、このジャングルの木々の成長に応じて計画的に収穫を得ることで、環境の保全と農業を同時に行おうとする「アグロフォレストリー」と呼ばれる活動も行われはじめています。この運動を支えるため、遠く離れた国でも、積極的にこうした農法による農作物を購入し、ジャングルを維持し、二酸化炭素削減に繋げようとする動きも出て来ています。

ヨーロッパでは自転車の利用を推奨することで、自動車の利用を減らし、排ガスを減らそうとしている国があります。また、化石燃料ではなく、ゴミで出た熱で厳しい冬でも温かい生活ができるよう工夫している国もあります。

日本では、3R運動といってReduce Reuse Recicle、すなわち、包装など不要な際は受け取らず、まだ使えるものはすぐ捨てない、また資源を大切にすることを柱とした個々でのエコ活動を推進しています。



参考:http://nationalgeographic.jp/nng/sp/inochi/message5_2.shtml
   ナショナルジオグラフィック 福岡伸一氏インタビュー

   http://socialdesignlab.sblo.jp/article/94879966.html
   早稲田大学 早田宰 研究室 ホームページ

   http://www.jst.go.jp/lcs/scenario/towardslcs.html
   独立行政法人 科学技術振興機構 低炭素社会戦略センター「低炭素社会に向けて」

   NHK放送「アマゾンを救う“森”づくり〜日本人移民の挑戦〜」

環境への取り組みは、未来に向けての長期的な取り組みに沿って行わなければ、急な転換なできません。
そこで、政府も環境保全を重視した技術開発や産業を重視し、炭素排出を低減させていく長期プランを計画しています。2050年までに、エネルギーや、ものづくりにおいても、多くの転換ができていないといけません。

人間は生きる限り、考え、つくり、そして社会を築きます。
その活動を「地球」という母船のありようを常に考え、行うように全面的に考え方を変えなければなりません。
もう、自分だけの、あるいは、一つの国だけの利益を求める時代は終わったのです。

一つの星に、同じ時代に生きる私たちは、戦う相手ではなく、互いの存在を尊び、生きる喜びをわかちあえる存在のはずです。


参考

放送大学
<img border="0" alt="6_04.jpg" src="http://pyx.up.seesaa.net/image/6_04.jpg" width="500">
重点的に取り組むべき21の革新技術

<img border="0" alt="6_05.jpg" src="http://pyx.up.seesaa.net/image/6_05.jpg" width="500">
2050年における低炭素社会像シナリオ

<img border="0" alt="6_06.jpg" src="http://pyx.up.seesaa.net/image/6_06.jpg" width="500">
2050年に向けて二酸化炭素の排出を80%抑制した社会とは

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